特集「出演者インタビュー」 奈良フィルハーモニー管弦楽団交響曲第九番「合唱付き」
ベートーヴェン(1770〜1827)は、生涯において交響曲を9つ書きました。その中でももっとも有名といっても過言ではない第5番「運命」と第9番「合唱付き」が並びます。
第5番「運命」は、「ダダダダーン」の旋律がよく知られた交響曲。この鮮烈な旋律について、ベートーヴェンの弟子曰く「これが運命の扉を叩く音だ」とベートーヴェンが話した……という逸話も。最近になってこの説は信憑性の薄さが指摘されていますが、何度も畳みかけるように登場する「ダダダダーン」に、聴き手のみなさんがどんな「運命」を思い浮かべたくなるのか、その想像に委ねたいところです。
そして交響曲第9番「合唱付き」は、ベートーヴェンが史上初めて交響曲に合唱を加えた前代未聞の名作。4楽章形式で、合唱(および4人の独唱)が登場するのは最終楽章です。その冒頭に、第1楽章から第3楽章までの重要な旋律がおさらいのように登場し、第4楽章を進めるためのキーワード=伏線にもなっているため、全楽章通して耳をこらして聴いてみてください。
(文・桒田萌)
特定非営利活動法人
奈良フィルハーモニー管弦楽団
奈良フィルハーモニー管弦楽団は「奈良にプロ・オーケストラを」と、志ある音楽家たちが集い、1985年に初代団長(故)全良雄氏が創立。現在、大原末子氏が団長に就任。メンバーは、高度な音楽教育を受け、ソロやアンサンブル等にも活躍する他、積極的に後進の指導にもあたっている。その音の美しさ、緻密なハーモニーと高い芸術性は聴衆から高く評価をうけている。第26回定期演奏会は日本を代表する指揮者秋山和慶氏を迎え好評を博した。重厚なクラシック・スタイルから親子向けファミリーコンサート、そしてレクチャーコンサートからサロンコンサートまで、幅広い顔を持つオーケストラとして奈良県内に広く親しまれている。奈良県をはじめとして県内自治体主催のイベント、フェスティバルに、また県内各所の文化会館やホールの主催公演にも数多く出演し、地域の文化芸術の発展に貢献している。県外においても、近畿一円の公共団体から招かれ各地で演奏活動を行っている。正指揮者に粟辻聡氏を音楽アドバイザーに延原武春氏を迎え更なるステップを目指し名実ともに「わが町・奈良のプロ・オーケストラ」として多くの県民の強い支持を得ている。全国32番目のプロ・オーケストラとして日本オーケストラ連盟に籍を置く。
ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」が音楽史上、革新的だった理由
年末になると必ずどこかから聴こえてくる、ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」。現代では当たり前のように演奏されていますが、初演当時は耳に新しく画期的な作品だったそう。合唱の歴史を紐解きながら、その理由を紹介します。
器楽のみで演奏される4楽章形式の「交響曲」に合唱(および独唱)が加わったのは、第九が初めてのことでした。交響曲においても、さらに長い歴史をもつ合唱においても、非常に先端的なことであったといえます。
合唱とは、旋律や音程はさまざまに、一つの音楽を成す行為のことです。グレゴリオ聖歌の発展に伴い、複数人で歌う「多声音楽」が生まれますが、これが合唱の起源といえるでしょう。
そのなかで2つ、3つ、4つとパートの数が増え、さまざまな合唱作品が生まれ、無伴奏であったのが器楽と共に歌われるようになるなど、その表現や技法も多様になります。徐々に教会音楽だけでなく、巷の人々が日常の出来事や感情、恋など、人間生活における営みを歌う作品もクローズアップされるように。ベートーヴェン以前の合唱作品でよく知られているのは、キリストの受難を歌う『マタイ受難曲』や『ヨハネ受難曲』、また華々しい「ハレルヤ!」で有名なヘンデルの『メサイア』、同時期の場合はモーツァルトの『レクイエム』などがあります。
ハイドンが交響曲を確立させて以降、その弟子であるベートーヴェンは交響曲を書くたびに何かしらの目新しい試みを取り入れてきました。交響曲第1番では予想だにしないハーモニーで音楽を開始して聴衆の度肝を抜かせたり、第5番「運命」ではこれまで交響曲で使用されてこなかった楽器を導入したり、第6番「田園」では楽章ごとにタイトルをつけて「自然が呼び起こす感情」を表現したり……。
その末に、自身にとって最後の交響曲である第九では合唱を導入したわけです。さらに、詩の内容も革新的でした。「抱き合え、諸人よ!」「全ての人々は兄弟になる」と、階級や身分などのしがらみのない社会的な平和を望むテキストを使用して強い言葉を乗せることで、「情景や感情はいらず、音のみで音楽そのものを表現する」というスタンスであった交響曲にメッセージを込め、結果的に交響曲ジャンルに新たな価値が付加されたといってもいいでしょう。
世界の平和を祈るかのようなメッセージが込められた第九は、年末だけでなくいつなんどきに触れても普遍的な価値をもつ作品です。奈良フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、その素晴らしさを噛み締めたいものです。
(文・桒田萌)
延原 武春(指揮)
18世紀音楽を専門とする指揮者。1963年にテレマン室内オーケストラを創設。彼らを率いて「文化庁芸術祭・優秀賞」(関西初)・「第17回サントリー音楽賞」(現在もテレマンと東京交響楽団、京都市交響楽団以外のプロオーケストラは受賞していない)等を受賞。1982年、初演当時の編成とベートーヴェンの指定したテンポで「第九」を演奏(世界初)。2008年にはベートーヴェンの交響曲全曲を、作曲者指定のテンポとクラシカル楽器を使用して指揮。この公演が引き金となってドイツ連邦共和国より「功労勲章功労十字小綬章」が贈られた。2009年には大阪フィルに客演(民音主催)し、J.ブラームス:交響曲第1番を指揮。2010年~12年には同楽団は延原とともにベートーヴェン;交響曲全曲シリーズを主催。「『大阪フィルの次代を拓く』と言って過言ではない名演」等と絶賛を博するなど一際大きな話題となった。また、同時期に日本フィル横浜定期演奏会にも客演。その際のブラームス:交響曲第1番はEXTONレーベルからCD化された。2011年には延原の元に多くのプレイヤーが集う“一日だけのオーケストラ”としてorchestra Japan 2011が結成され、マーラー:交響曲 第4番を演奏。その演奏はライヴノーツ・レーベルからリリースされ『レコード芸術』誌で特選盤に選ばれた。これらの成果が契機となってこのオーケストラは2012年にも再結集され、京都・大阪・神戸でやはりドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」など、ロマン派のレパートリーを取り上げ、好評を博した。また、東日本大震災追悼・復興祈念コンサートとして、いずみホールでブラームス:ドイツ・レクイエムを、2014年、2015年と2年連続で演奏。2014年の公演はライヴノーツ・レーベルよりCD化され、話題となった。
公演概要
- 公演名
-
〜バロックの巨匠延原武春が振るベートーヴェンの世界〜
奈良フィルハーモニー管弦楽団 交響曲第九番「合唱付き」
- 日程
- 5月19日(日) 14:00開場/ 15:00開演
- 会場
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DMG MORI やまと郡山城ホール 大ホール
〒639-1160 奈良県大和郡山市北郡山町211-3 (Google Map) - 座席指定
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指定席
※未就学児童の入場はご遠慮ください。
- チケット価格
- A席:1,000円
※4公演通し券対象
当日券:残席がある場合に限り、会場にて販売(500円増し) - 曲目
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L.v.ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調「運命」より第1楽章
L.v.ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」 - 出演者
-
延原武春(指揮)、白石優子(ソプラノ)、西村規子(アルト)、松本熏平(テノール)、大谷圭介.(バリトン)、奈良フィルハーモニー管弦楽団、ムジークフェストなら合唱団
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